ブロードキャスト(Broadcast)とは、同じネットワークにつながるすべての機器へ、いっせいに同じデータを送る通信の方法のことです。相手を特定せず、届く範囲の全員に呼びかけます。
現実世界に例えると、ブロードキャストは校内放送のようなものです。「〇〇さん、職員室まで」と全館に流せば、名指しされた本人に届きます。ほかの人は聞き流すだけですが、放送そのものは全員の耳に入っています。
ブロードキャスト(Broadcast)図解
三つの送り方
なぜ全員に送るのか
相手が分からないときに使います。「このIPアドレスを持っているのは誰か」「アドレスを配ってくれる機器はいるか」といった、宛先を特定できない場面では、全員に呼びかけるほかありません。答えられる機器だけが返事をする、という形になります。
代表的な使われ方
身近な仕組みが二つあります。IPアドレスから相手のMACアドレスを調べるARPと、機器へアドレスを自動で配るDHCPです。パソコンをネットワークにつないだ瞬間、この二つが裏側で動いています。
届く範囲は決まっている
無制限に広がるわけではありません。ブロードキャストが届く範囲は「ブロードキャストドメイン」と呼ばれ、ルーターを越えることはありません。スイッチは素通しにしますが、ルーターがせき止めます。この性質が、ネットワークを分ける理由の一つになっています。
専用のアドレスがある
宛先の書き方も決まっています。その網で使える最後の番号が、全員あてを表すアドレスとして予約されています。たとえば192.168.1.0から始まる網であれば、192.168.1.255がこれにあたります。この番号は機器には割り当てられません。
多すぎると全体が遅くなる
便利な反面、負担にもなります。全員がいったん受け取って中身を確かめる必要があるため、数が増えるほど、関係のない機器まで処理に手を取られます。一つの網に何百台もつなぐと、この積み重ねが無視できなくなります。
ネットワークを分ける理由
そこで区切ります。サブネットやVLANで網を小さく分けておけば、ブロードキャストの届く範囲もそのぶん狭くなります。部署ごとや用途ごとに分ける設計は、安全のためだけでなく、この負担を抑える意味も持っています。
暴走すると全体が止まる
最悪の形がこれです。配線が輪になっていると、ブロードキャストが出口を失って回り続け、雪だるま式に増えてネットワーク全体を埋め尽くします。これがブロードキャストストームで、スパニングツリーはこれを防ぐために用意された仕組みです。
IPv6には存在しない
知っておくと役立ちます。新しい規格であるIPv6では、ブロードキャストという仕組みそのものが廃止されました。代わりに、必要な相手だけを対象とするマルチキャストが使われます。関係のない機器に負担をかけない設計へ、改められた形です。



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