ユニキャスト(Unicast)とは、送り手が宛先を一つだけ指定して、その相手にだけデータを届ける通信の方法のことです。ネットワーク上を流れる通信の大半はこの形で、Webの閲覧もメールの送受信も、すべてユニキャストで運ばれています。
現実世界に例えると、ユニキャストは宛名を書いて出す手紙のようなものです。届け先が一人に決まっているので、関係のない人の手元には渡りません。当たり前のやり方に見えますが、通信の世界では「相手を特定できている」こと自体が前提条件になります。
ユニキャスト図解
ほかの送り方との比較
| 方式 | 宛先 | 同じ内容を10台へ | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| ユニキャスト | 特定の1台 | 10回送る | Web、メール |
| マルチキャスト | 指定した複数 | 1回で済む | 映像の同時配信 |
| ブロードキャスト | 同じ網の全員 | 1回だが全員に届く | ARP、DHCP |
| エニーキャスト | 最も近い1台 | 最寄りへ振り分け | 公開DNS、CDN |
宛先はアドレスで指し示す
相手を特定する手がかりがアドレスです。同じネットワークの中ではMACアドレス、ネットワークをまたぐ場合はIPアドレスが、それぞれ「この一台へ」という指定に使われます。IPアドレスからMACアドレスを調べる手続きがARPで、ここだけは相手が不明なのでブロードキャストが使われます。
スイッチが通り道を覚える
無駄なく届く仕組みがあります。スイッチは、どの差込口の先にどの機器がいるかを学習して表に記録し、宛先に合う差込口だけへデータを流します。そのため同じネットワークに何十台つながっていても、関係のない機器には届きません。この選別が、ネットワーク全体の効率を支えています。
一対一だから成り立つこと
ユニキャストの強みは確実さです。相手が決まっているため、届いたかどうかの確認を返してもらい、抜けがあれば送り直すといった、丁寧なやり取りができます。TCPによる通信がこれにあたり、ファイルの受け渡しのように一文字の欠けも許されない用途で使われます。
大人数への配信には向かない
弱点もはっきりしています。同じ映像を千人へ届けるとき、ユニキャストでは千本ぶんの通信を同時に流すことになり、回線も配信元の負荷も人数に比例して増えていきます。社内向けの一斉配信でマルチキャストが検討されるのは、この増え方を避けたいからです。
それでも動画配信の主流である
意外に思われる点です。インターネット越しの配信では、途中の経路がマルチキャストに対応していないことが多く、結局はユニキャストで配る方式が主流になっています。代わりに、利用者の近くに配信拠点を置くCDNを使い、一本あたりの距離を短くして負荷を分散させています。
IPv6での扱い
新しい規格では整理が進みました。IPv6にはブロードキャストがなく、ユニキャスト、マルチキャスト、エニーキャストの三つに整理されています。ユニキャストの中でも、世界中で通用するアドレスと、同じ回線内だけで使うアドレスが分けられ、用途に応じて使い分けられます。
通信を調べるときの手がかり
障害の切り分けにも関わります。通信の記録を見たとき、宛先が特定の一台になっていればユニキャスト、すべてがFで埋まったアドレスならブロードキャストと見分けられます。ブロードキャストの割合が不自然に多い場合は、ネットワークの構成に問題がある可能性を疑います。



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