インシデント(Incident)とは、システムやサービスが本来の状態から外れ、利用者に影響が出ている、あるいは出かねない出来事のことです。障害だけでなく、安全面での不審な兆候や、大事には至らなかったひやりとする場面も含まれます。
現実世界に例えると、インシデントは工場で鳴った異常を知らせるブザーのようなものです。実際に止まってしまった場合もあれば、止まる手前で気付いた場合もあります。どちらも記録に残し、原因をたどることに意味があります。
インシデント図解
紛らわしい言葉との違い
| 言葉 | 意味するもの | 対応の目的 |
|---|---|---|
| インシデント | 起きている不具合そのもの | 早く元へ戻す |
| 問題 | その裏にある根本の原因 | 二度と起こさない |
| アクシデント | 実害が出てしまった事故 | 被害を抑える |
| ヒヤリハット | 被害に至らなかった兆候 | 予兆として活かす |
まず復旧を優先する
対応の原則はここにあります。インシデントへの対応で最初に目指すのは、原因の究明ではなく、利用者が使える状態へ一刻も早く戻すことです。応急の処置で構わないので影響を止め、根本の原因を調べるのはその後に分けて行います。この切り分けが、初動の速さを生みます。
影響の大きさで優先度を決める
同時に複数が発生する場面もあります。「どれだけの人に、どれだけ深刻な影響が出ているか」という基準で段階を付け、上から順に人手を割り当てます。全社が止まっているのか、一人が不便を感じているのかで、動員すべき人も報告すべき相手も変わってきます。
情報セキュリティの分野でも使う
意味の範囲が広い言葉です。不正なアクセスの痕跡、ウイルスの検知、情報の持ち出しといった安全上の出来事も、セキュリティインシデントと呼ばれます。この場合は復旧に加えて、被害の範囲を保全し、証拠を消さないように扱うことが重要になってきます。
窓口を一つにまとめる
運用の型として広く使われています。利用者からの連絡先をサービスデスクに一本化し、そこですべてのインシデントを記録してから担当へ割り振る形にします。個別の担当者へ直接持ち込まれると、記録が残らず、同じ不具合が何件起きているのかも見えなくなってしまいます。
記録を残すこと自体に価値がある
後になって効いてくる部分です。いつ、何が起き、どう対応したかを残しておくと、似た事象が再び起きたときに過去の対応をそのまま参考にできます。件数を数えることで、どの機能が弱いのか、どの時間帯に集中するのかといった傾向も見えてきます。
収束後に振り返る
対応の締めくくりに置くべき作業があります。落ち着いてから、なぜ起きたのか、なぜ気付くのが遅れたのかを関係者で振り返り、再発を防ぐ手立てを決めます。このとき担当者を責める場にしてしまうと、次から報告が上がらなくなるため、仕組みの問題として話すことが大切です。
小さな兆候を拾い上げる
予防の観点で重要な点です。大きな障害の前には、たいてい小さな不調や、気付かれずに済んだ操作ミスが積み重なっています。実害が出なかった出来事も気軽に報告できる空気を作っておくと、深刻な事態になる前に手を打てる機会が増えます。



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