量子コンピューター(Quantum Computer)とは、物質を作るごく小さな粒が持つ「量子」の性質を利用して計算を行う、新しい仕組みのコンピューターです。今のコンピューターでは時間がかかりすぎる特定の計算を、はるかに短い時間で解ける可能性があるとして、世界中で研究と開発が進められています。
現実世界に例えると、量子コンピューターは迷路の出口を探すとき、一本ずつ道をたどるのではなく、すべての道に同時に水を流して出口を見つけるやり方のようなものです。たくさんの可能性を同時に扱い、その中から答えを浮かび上がらせます。
量子コンピューター図解
従来のコンピューターとの違い
| 項目 | 従来のコンピューター | 量子コンピューター |
|---|---|---|
| 情報の単位 | ビット(0か1) | 量子ビット(0と1の重ね合わせ) |
| 得意な計算 | 一般的な処理すべて | 素因数分解や分子の計算など特定の問題 |
| 動く環境 | 常温 | 極低温など特殊な環境が多い |
| 計算の誤り | ほぼ起きない | 起きやすく、訂正が課題 |
量子ビットと重ね合わせ
仕組みの土台です。今のコンピューターのビットは0か1のどちらかですが、量子ビットは0と1を同時にとる「重ね合わせ」という状態を持てます。量子ビットの数が増えるほど、同時に表せる組み合わせは急激に増えていくため、膨大な可能性を一度に扱えるとされています。
量子もつれと干渉
計算を進める仕掛けです。複数の量子ビットを、互いの状態が結び付いた「量子もつれ」の関係にし、波のように強め合ったり打ち消し合ったりする「干渉」を利用して、正しい答えが出やすくなるよう操作します。重ね合わせだけでなく、こうした性質を組み合わせることが計算の鍵になります。
何でも速くなるわけではない
誤解されやすい点です。量子コンピューターが速く解けるのは、そのための計算手順が見つかっている一部の問題に限られます。文書の作成や動画の再生のような日常の処理では、今のコンピューターのほうが向いています。将来も置き換わるのではなく、得意な問題を分担して解く関係になると考えられています。
期待されている使い道
応用の分野です。新しい薬や素材を開発するための分子の振る舞いの計算、物流や金融での膨大な組み合わせから最適な答えを探す問題などで、活用が期待されています。いずれも、今のコンピューターでは計算量が多すぎて、近似に頼らざるを得なかった分野です。
作り方にはいくつもの方式がある
装置の話です。量子ビットを作る方法には、超伝導の回路を使うもの、イオンや原子を閉じ込めて使うもの、光を使うものなどがあり、どれが主流になるかはまだ決まっていません。超伝導の方式は、絶対零度に近い極低温まで冷やす大がかりな装置が必要になります。
誤りの多さが最大の課題
実用化への壁です。量子ビットの状態は熱や振動などのわずかな影響でも崩れやすく、計算の途中で誤りが起きやすいという弱点があります。たくさんの量子ビットを束ねて誤りを打ち消す「量子誤り訂正」の研究が進んでおり、実用的な規模に届くかどうかが今後の焦点です。
暗号への影響
社会への影響です。十分な性能の量子コンピューターが実現すると、インターネットの通信を守る暗号の一部が解読されてしまうおそれがあります。その日は「Qデイ」と呼ばれ、量子コンピューターでも破られにくい新しい暗号への切り替えが、すでに世界中で始まっています。
あわせて知っておきたい用語
- Qデイ:
量子コンピューターによって、今の暗号が破られると予想される日です。 - 耐量子暗号:
量子コンピューターでも解読されにくいよう設計された暗号方式です。 - ビット:
コンピューターが扱う情報の最小単位です。 - スーパーコンピューター:
膨大な計算を高速に行うために作られた、非常に高性能なコンピューターです。



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