MPEG(エムペグ/Moving Picture Experts Group)とは、映像と音声の圧縮方式を定めてきた国際的な専門家グループと、そこで作られた規格の総称のことです。いま私たちが見ている動画や聴いている音楽の多くは、この一連の規格の上で成り立っています。
現実世界に例えると、MPEGは荷造りの仕方を決める業界団体のようなものです。誰がどう包んでも受け取る側が開けられるように、包み方の共通の作法を決めています。作法が共通だからこそ、どの機器でも再生できます。
主な規格の系譜
| 規格 | 時期 | 主な用途と成果 |
|---|---|---|
| MPEG-1 | 1993年 | ビデオCD。音声部分からMP3が生まれた |
| MPEG-2 | 1995年 | DVDと地上デジタル放送 |
| MPEG-4 | 1999年 | MP4やH.264。ネット配信の土台 |
| MPEG-H | 2013年 | H.265。4Kや8Kの映像 |
もとは団体の名前
言葉の成り立ちを押さえておきます。MPEGは「動画の専門家グループ」を意味する組織の名前で、1988年に国際的な標準化機関のもとで発足しました。その団体が定めた規格にも同じ名前が付けられたため、いまでは団体を指す場合と規格を指す場合の両方で使われています。
なぜ圧縮が必要だったのか
背景を知ると意義が見えてきます。映像をそのまま記録すると、一時間ぶんで数百ギガバイトに達し、当時の記憶媒体にも回線にもまるで収まりませんでした。見た目にほとんど影響しない情報を大胆に削ることで、はじめて実用的な大きさに収めることができたのです。
前後のコマの差だけを記録する
圧縮の核になる考え方です。動画は前後のコマがよく似ているため、すべてを記録せず「前のコマからどこが変わったか」だけを残します。定期的にすべての情報を持つコマを挟み、そこを起点に差分を積み重ねる仕組みで、映像の大きさを劇的に小さくしています。
MP3を生んだ規格
身近な例として欠かせません。MP3の正式な名前は「MPEG-1 Audio Layer-3」で、動画規格の音声部分として作られたものが独立して広まりました。人の耳が聞き取りにくい音を省く仕組みによって、音楽の持ち歩き方を一変させ、後の配信サービスへつながっていきました。
MP4やH.264との関係
混同しやすい点を整理します。MP4は中身を入れる容器の規格、H.264は映像を圧縮する方式で、どちらもMPEG-4という大きな枠の一部として定められました。名前は違っても同じ系譜に属しており、これらを組み合わせて一本の動画ファイルができあがっています。
特許料が普及の重しになった
技術面以外の事情も無視できません。規格には多数の企業の特許が含まれ、使うには権利者へ使用料を払う必要があり、その窓口や金額の複雑さが長く問題とされてきました。この負担を避けたい流れから、無償で使える規格を目指す別の動きも生まれています。
団体としての役割は終えた
現在の状況に触れておきます。MPEGという組織そのものは2020年に再編され、活動は別の枠組みへ引き継がれました。とはいえ規格の名前は残り続けており、放送や配信、保存の現場では、いまも日々この一連の技術が使われています。

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