FM音源(FM Synthesis)とは、ある音の波で別の音の波を揺らし、その揺れ方を変えることで、さまざまな音色を作り出す電子的な音の作り方のことです。1980年代から1990年代にかけて、シンセサイザーやパソコン、家庭用のゲーム機、携帯電話の着信音などに広く使われました。
現実世界に例えると、FM音源はブランコをこぐ速さを細かく変えながら、揺れ方の違いで多彩な動きを生み出すことのようなものです。こぎ方の組み合わせ次第で、ゆったりした揺れから激しい揺れまで、思いがけない動きが生まれます。
FM音源 図解
FMの意味
名前の話です。FMは「Frequency Modulation(周波数変調)」の略で、ラジオのFM放送と同じ言葉です。ラジオでは、音声を遠くへ届けるために波を揺らしますが、FM音源では、聞こえる音の波そのものを別の波で揺らします。揺らし方の強さや速さを変えるだけで、音色が大きく変わるのが特徴です。
少ない部品で多彩な音
仕組みの特徴です。FM音源は、単純な波を作る「オペレーター」という部品をいくつか組み合わせ、互いに揺らし合うことで、複雑な響きを作り出します。録音した音を使わずに、計算だけで金属的な響きやベルの音、力強いベースの音などを表現できました。少ない部品と記憶容量で多彩な音を出せたことが、広く使われた理由です。
大学の研究から生まれた
成り立ちの話です。FM音源の原理は、1960年代の終わりから1970年代にかけて、アメリカのスタンフォード大学のジョン・チョウニングが研究し、発表したものです。この技術にいち早く注目したのが日本のヤマハで、大学から権利を得て、楽器や半導体の部品として製品化しました。研究の成果が、世界中の音楽を変える技術になりました。
音楽の世界を変えたDX7
代表的な楽器です。1983年にヤマハが発売したシンセサイザー「DX7」は、FM音源ならではの澄んだ響きと、手の届く価格で世界的なヒットになりました。エレクトリックピアノやベースの音色は、1980年代のポップスで数多く使われ、当時の音楽を象徴する音のひとつになっています。デジタルのシンセサイザーが広まるきっかけになった製品です。
パソコンとゲーム機の音
身近な機械への広がりです。ヤマハのFM音源の部品は、日本のパソコンやゲーム機に数多く搭載され、多くの人がその音を耳にしました。
| 部品の型番 | 主な搭載機種 | 登場した時期 |
|---|---|---|
| YM2203 | PC-8801mkIISRなど | 1985年ごろ |
| YM2151 | X68000、業務用ゲーム機など | 1980年代半ば |
| YM2612 | メガドライブ | 1988年ごろ |
ゲーム音楽の黄金期
文化への影響です。1980年代後半のパソコンやゲーム機の音楽は、FM音源の限られた音の数と音色をどう使いこなすかという工夫の中で作られました。作曲者たちは、音色の数値を細かく作り込み、限られた条件の中で印象深い曲を数多く生み出しました。こうした音は、今も根強いファンに愛され、当時の音を再現する楽器やソフトも作られています。
携帯電話の着メロ
もうひとつの身近な使い道です。1990年代の終わりから2000年代の初めにかけて、携帯電話の着信音を和音で鳴らすために、FM音源の部品が広く使われました。それまでの単音の着信音に比べて、何音も重なる豊かな着メロが鳴らせるようになり、流行の曲を着メロにして楽しむ文化が広まりました。
今のFM音源
現在の姿です。録音した音を再生する方式が主流になった今でも、FM音源は独特の音色を生み出す手段として使われ続けています。パソコンで動くソフトのシンセサイザーにもFM音源を再現したものが多く、音楽の制作現場で今も活躍しています。手軽に実際の音を試せるので、興味があれば聴き比べてみるのも楽しいでしょう。
あわせて知っておきたい用語
- シンセサイザー:
電子的な仕組みで、さまざまな音を作り出す楽器です。 - PCM音源:
録音した音のデータを再生して、音を鳴らす方式です。 - MIDI:
電子楽器やパソコンの間で、演奏の情報をやり取りする規格です。 - サウンドボード:
パソコンで音を鳴らすための、拡張用の部品です。



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