PCM(Pulse Code Modulation/パルス符号変調)とは、音などのなめらかに変化する信号を、一定の間隔で測り、その値を数値に置き換えて記録する、デジタル化の基本となる方式のことです。音楽CDやWAVのファイル、電話の音声など、デジタルの音の多くは、このPCMの考え方をもとに作られています。
現実世界に例えると、PCMは山道の高さを、10メートル歩くごとに測ってノートに書き留めていくことのようなものです。測る間隔を細かくし、高さを細かい単位で書くほど、ノートの数字から元の山道の形を正確に描き直せます。
デジタル化の3つの手順
PCMの仕組みです。PCMでは、標本化、量子化、符号化という3つの手順で、音をデジタルのデータに変えます。
| 手順 | していること | 決める値 |
|---|---|---|
| 標本化 | 一定の間隔で信号の値を測る | サンプリング周波数 |
| 量子化 | 測った値を決まった段階に丸める | ビット深度 |
| 符号化 | 丸めた値を0と1の並びにする | 記録の形式 |
音質を決める2つの値
品質の決まり方です。PCMの音質は、1秒間に何回測るかを表す「サンプリング周波数」と、1回の値を何段階で記録するかを表す「ビット深度」で決まります。サンプリング周波数が高いほど高い音まで記録でき、ビット深度が大きいほど小さな音から大きな音までをなめらかに表せます。音楽CDでは、44.1kHz、16ビットという組み合わせが使われています。
名前の意味
言葉の出どころです。「パルス」は短い電気の信号、「符号」は0と1のような記号、「変調」は信号を送りやすい形に変えることを意味します。音の値を、電気のパルスのあるなしで表す符号に変えて送る方式であることから、この名前が付きました。もともとは、電話の音声を遠くまで品質を落とさずに送るための通信の技術として考えられたものです。
誕生と電話での利用
歴史の話です。PCMは、1930年代の終わりに、イギリスの技術者アレック・リーブスが考案したとされています。当時の技術では実用化が難しかったものの、のちに電子の部品が発達すると、電話の通信網に取り入れられました。電話の音声は、1秒間に8000回測り、8ビットで記録する形が標準となり、1本の通話あたり64kbpsという通信の速さの基本になりました。
音楽CDとリニアPCM
身近な使われ方です。音楽CDには、PCMで変換した音のデータが、圧縮されずにそのまま記録されています。このように、測った値を加工せず、そのまま並べて記録する方式は「リニアPCM」と呼ばれます。WAVやAIFFといった音声のファイル、Blu-rayの音声、テレビとつなぐHDMIの音声などでも、リニアPCMが使われています。
圧縮した音声との違い
よく比べられる方式です。MP3やAACは、PCMのデータから、人の耳に聞こえにくい部分を削ってデータを小さくしたものです。PCMは音質を保てる代わりにデータが大きく、MP3やAACは音質をわずかに犠牲にする代わりにデータを小さくできます。音楽の制作や保管にはPCM、持ち歩いて聴くには圧縮した形式、という使い分けが一般的です。
PCMを工夫した方式
発展した方式です。PCMのデータを小さくするため、前の値との差だけを記録する「DPCM」や、その差の記録の仕方を状況に応じて変える「ADPCM」といった方式も作られました。ADPCMは、かつてのゲーム機の効果音や、電話の通信などで使われました。また、まったく違う考え方で音を記録する「DSD」という方式も、高音質の音源で使われています。
音以外での使われ方
広がる応用です。PCMの考え方は、音だけでなく、温度や振動、心電図のように時間とともに変化する、さまざまな信号のデジタル化にも使われています。センサーで測った値を一定の間隔で記録し、数値として保存するのは、PCMと同じ発想です。デジタルの機器が身のまわりの変化を扱うための、最も基本的な方法の一つといえます。

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